事業仕分けのときに文科省からこういうメール着ていたような

事業仕分けで科学関連事業、大学事業がとりあげられたとき、所属大学や文部科学省、あるいは、科学関連のNPOからもっと明確に意見を誘導するようなメールが届いていたような気がする。

違う点は、「なお、会社のPCでは処理能力が低いこと等から、是非、ご自宅等のPCからのアクセスを御願い致します。」というところがないぐらいかなぁ。

九州電力原子力発電本部の課長級社員が関係会社の社員に送ったメールは以下の通り。

 【ご依頼】国主催の佐賀県民向け説明会へのネット参加について 2011年6月22日14時16分26秒

 協力会社本店 各位

 平素よりお世話になっております。メール投げ込みにて失礼を致します。標記については、報道等により今週末に開催される旨、既にご承知のことと存じます。

●件名:国主催による佐賀県民向け説明会(原子力発電所の安全性)

●日時:平成23年6月26日(日)午前(10時〜11時30分の予定)

●内容:説明会の方式は国が調整中。混乱を避けるため、県民、4、5人が経産省原子力安全・保安院資源エネルギー庁の担当者から説明を受け、疑問点や不安に思う点などを質疑する予定。

●配信:(1)やり取りはケーブルテレビとインターネットで生中継され、視聴者からの質問もファクスや電子メールで同時に受付。(2)アクセス可能なwebsiteアドレスは、現時点で未公開ですが、佐賀県庁HPや経産省HPに掲載予定。あるいは、Ustreamにて“genkai”あるいは“玄海”等で検索することによりアクセス可能。(3)小職にて、継続してサーベイし、判明次第、追って追伸予定。

●その他:(アドレス略)

 本件については、我々のみならず協力会社におかれましても、極めて重大な関心事であることから、万難を排してその対応に当たることが重要と考えております。

 つきましては、各位他関係者に対して、説明会開催についてご周知いただくとともに、可能な範囲で、当日ネット参加へのご協力※をご依頼いただきますよう、御願い致します。

 ※説明会ライブ配信websiteにアクセスの上、説明会の進行に応じて、発電再開容認の一国民の立場から、真摯に、かつ県民の共感を得うるような意見や質問を発信。

 なお、会社のPCでは処理能力が低いこと等から、是非、ご自宅等のPCからのアクセスを御願い致します。

 また、ネット参加に当たっては、接続後アカウントの取得等操作が必要になりますので、ご承知置きください。

 以上

 続報【ご依頼】国主催の佐賀県民向け説明会へのネット参加について 2011年6月24日9時26分9秒

 協力会社本店 各位

 平素よりお世話になっております。先にご依頼申し上げました標記については、以下URLにより詳細確認可能ですので、よろしく御願い致します。なお、ご意見はメールあるいはファクシミリでの受付されるとのことであり、接続後のアカウント取得等操作は不要なようです。

 以下URLにアクセスください。

 佐賀県(アドレス略)

 経産省(アドレス略)

 以上

フェアじゃないのは大前提として、利害関係者がこういうお願いをするのは当然のことと考えて行動した方が民主主義社会では現実的に思う。

自分が利害関係者になったときの教訓としては、メールやFAXは証拠が残るので後から「組織票だろ!」と文句言われても構わないときだけこういうお願いをするべきであるということだと思う。

追記

九州電力のやらせメールについて、メールの内容や参加の方法などから九州電力が子会社に参加や協力を強制できないように見えたので、私は特にそんなにひどいとは思わなかった。

利害関係者に対して、このようなイベントを周知し、意見を応募してもらうという観点からすれば、事業仕分けの際に大学や文部科学省、そして私自身が行ったことと差がないと思ったので書いたのがこのエントリー

実際、私は当時以下のようなエントリーでパブリックコメントへの投稿を呼びかけた。

さらには所属している学会にも意見を言おうと呼びかけた。

復活枠のときも以下のように呼びかけた。

で、復活枠のときに文科省の仕分け分に対してパブリックコメントの8割が集まったことについて批判があり、私は「それはしょうがないでしょ」と書いた。

こういうことやっている私が九州電力のメールをやらせというのは、ちょっとアレだなぁというのが正直な感想。

一方で、はてなブックマークなどでいただいた意見からすると、利害関係者なのにそれを隠して意見を述べるように呼びかけていた点がダメだという指摘があった。それは確かにフェアではない。フェアでないという指摘には賛成。そして、フェアな方が良いというのも賛成。

  • あれは氏名職業を明記する必要があった。conflicts of interestが分かるのと分からないのとでは大違い。
  • 佐賀県民向けの説明会に、佐賀県民の振りして参加してコメントするように勧めていると読めるのがまずいんでしょう。/国民向けの意見募集に国民が意見するのとは違いますね。
  • 当然、公になったり誰かの目に触れられうることも最悪想定してのあのメールだと思う。利益相反、立場をはっきりさせない前提での協力依頼は逆に危ういと思えなかったところに思考のパタンを見たわけで罠に落ちてる。
  • 「私は佐賀県民ですが運転再開に賛成です」と「九電関係者ですが」では印象が全然違う。それがわかった上で、身分を隠した参加を要請したのが問題。/確かに当然あり得ることではあった。主催側の対策も必要だった。
  • 氏名職業のチェックってありましたっけ。というか、そろそろ一発逆転的な維新主義や直接民主制幻想を捨てて、地道で堅実な間接民主制を構築するべきなんですけどね。
  • コメント欄より

仕分けのとき(削った予算の重点配分)は、教育関係者であるとか大学教員であるとか明示していませんでしたっけ?
さらに、違う点としては、仕分けのときは受けるほうは何万件でも受けるキャパシティを用意していたので、そこに意見を投げることは他の意見を妨害しないけど、ライブの限られたキャパシティに大量のアクセスをすることは、他の意見の排除を意味します。

つうわけで、そもそもライブの説明会で何かができたことになるというのが間違ってるんだと思います。

ただ、本文の終わりにも書いたとおり、動機や立場、正しい・正しくないに関わらず、私たちはフェアじゃないことをしてしまいがちなのはご承知のとおり。ならば、フェアじゃないのは大前提として、利害関係者がこういうお願いをするのは当然のことと考えて行動した方が民主主義社会では現実的に思う。

そういう意味でパブリック・コメント文部科学省の熟議で個人情報をきっちり入力させたというのは、心弱い私たちのことを十分に考慮した良いシステムだったと思う。

コメント欄のごんべえさんがいうとおり、ライブの説明会でいろんなコメントがでても、仕組みが整っていないのだから、まともな意見とみなさない方が良いのだと思う。