米大統領選 民主党ブルームバーグ候補 市長時代のストップ・アンド・フリスク問題が再燃

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大統領選に向けて民主党の指名獲得を目指すマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長は12日、有色人種の取り締まりに関する2015年の発言について、自身の考えを反映したものではないと述べた。

ブルームバーグ氏は演説先のテネシー州チャタヌーガで、記者に対し「これらの言葉は、全国で最も多様性のある都市を私がいかに率いたかを反映した言葉ではないと思う。」と述べ、続けて「私はこの慣習と、それが起こした痛みについて謝罪をしている」と、市長時代にNY市警察が積極的に実施した「ストップ・アンド・フリスク」について語った。また「これは5年前だ。ご存知だと思うが、これは私の考え方と異なり、私の日々の行いを反映していない」と述べた。

ストップ・アンド・フリスク(Stop-and-frisk)とは、警察官が路上で疑わしいと判断した人物を呼び止め、身体検査を行い、武器などを所持していないか調査する行為。

前日、ブルームバーグ氏が2015年にアスペン研究所で行ったスピーチの録音がネットに出回った。この中でブルームバーグ氏は「殺人、殺人犯と遺体の95%」は「マイノリティの16歳から25歳だ。これはニューヨークでは本当のことで、事実上すべての都市に当てはまる」と発言。さらに「人々は、マリファナで逮捕している子供たちが全員マイノリティではないかというけれど、それは本当で、なぜかというと、すべての警察官をマイノリティの地域に配備しているからだ。なぜそれをするかというと、すべての犯罪がそこにあるから。そして、子供の手から銃を取り上げる方法は、彼らを試しにボディチェックすることだ」と、2013年に違憲判決が下された「ストップ・アンド・フリスク」を擁護していた。

録音は、ポッドキャストを運営する進歩派のベンジャミン・ディクソン氏が10日にシェア。広く拡散され、#BloombergIsRacist(ブルームバーグは人種差別主義者)が一時、トレンドとなった。

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トランプ大統領も、後に削除したツイートで「ワオ、ブルームバーグは完全な人種差別主義者だ」とコメントした。

ブルームバーグ氏は11日の声明で「トランプ大統領の削除したツイートは、絶え間なくアメリカを分断しようとする最新の例だ。」と非難しつつ、「私は警察のストップ・アンド・フリスクの慣習を引き継いだ。それは銃暴力を抑制する取り組みの一環で、過剰に使用された。」と説明。続けて「市長を終える頃には、私はそれを95%まで減少させたが、もっと早くやるべきだった。後悔しており、謝罪もした。それが黒人とラテンコミュニティに影響を与えることを理解するのに時間がかかりすぎたことについて、責任を負っている」と発表した。

一方、バーニー・サンダース議員をエンドースしている民主党アレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員は12日、ブルームバーグ氏の説明は不十分と非難した。

The Hillによると、コルテス議員は「これは私の家族で、私のコミュニティ。私の地域だった」と述べ、「人々の生活が破壊された。それでいて、これらの人々は自分たちの記録を抹消するつもり?ツイートで?」と発言。また「ストップ・アンド・フリスクはブルームバーグ政権の独特かつ大きな政策だった。前任者のせいにはできないと思う」と、距離を置こうとするブルームバーグ氏をけん制した。

ストップ・アンド・フリスクはブルームバーグ政権下で2011年まで件数が増加し、ピーク時には年間685,000件に到達した。有色人種がターゲットとなるケースが多く、「フロイド対ニューヨーク市」(Floyd v. City of New York)として集団訴訟へと発展した。連邦地裁判事は2013年、ストップ・アンド・フリスクは、間接的に人種的プロファイリングを引き起こしたとして、違憲判決を下した。市は上訴したが、2014年にビル・デブラシオ市長が就任した後に訴えを取り下げた。

現在のビル・デブラシオ市長の元では方針が改められ、2018年に件数が11,008件へと大幅に減少した。なお、2019年は13,459件と増加している。

ブルームバーグ氏は昨年11月にも、取締りは誤りであったと述べ、謝罪を表明している。